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黄金の本

よく食堂に据えてある引き戸がふた方向から開くケーキ用の筒形のケースのようなものに焼き物が飾ってあって、釉薬がキラキラ乱反射してはっきりと見えないうえに、和物とも洋物ともとれないようなそれらは目玉が飛び出る値段がついていて、ためいきがでる。上の段に無造作に置かれた籠にキャプションがついていて、曰く、「下の品々に手が出ないあなた、こちらの箸置きはいかが?」その好意に涙がでそうになりつつ中をあさるけれど思ったようなのがない。私は伊勢丹を歩きまわって箸置きを探したばかりだ。結果は思うようにならなかった。九谷焼の野菜の形のがあって、「このなすうちにもある」と思う。気に入った朝露をかためたような形のはふたつしかなかったけれど、うちは基本的に三人家族で、期間限定で六人家族になっているので、足りない。揃わないものは持ちたくない。すると、中にサクマドロップの透明そっくりの質感のガラスのに触って、ざらざらぼこぼこのそれを取り出してみると、カニが、カニと同じ大きさのカキを挟んでいるデザインだった。てんてんてん・・・と夢の中の私も思ったけれど意図不明ながらどんどん気に入ってくる。私ってほんとにすぐ理解できるものにすぐ飽きるのだよな。しかしこれもひとつしかなくて、泣く泣くガラスケースをしめた。すると、お店の中に音楽がなって、それはうきうきするようなジャズで、ああこれなんだっけなんだっけなんだっけと思い出しながら店の中をかつかつ歩き出口に向かった。平台には素敵なバッグやセーターのかわりに、一冊1万円以上するようなレゾネや大型ヴィジュアル本が並んでいる。私は、ほらね、近未来はこうなるって言ったでしょ。と、こってりインクののった、きらびやかなヴィジュアル本の林立する店の中を歩き、靴を買うようにして、その中の一冊を買った。


夢の検証
→音楽は菊地成孔
→本は十文字美信の『黄金風天人』
by chimakibora | 2010-06-03 21:10 | 生活