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笑い+宴

チェルフィッチュの『ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶』@ラフォーレ原宿 を観てきた。

チェルフィッチュとは、劇作家の岡田利規主宰の演劇ユニットで、氏は演劇界の芥川賞という説明がよくなされる岸田國士戯曲賞を受賞したりとか、筋肉少女帯じゃない方のオーケンこと大江健三郎に賞を授けられたりとか、見るべきものが他に無い演劇界の星・・・
という雑駁なわかり方をしていますがだいじょうぶでしょうか。

チェルフィッチュの演劇を観たことがないひとに、それがどのようなものか説明すると、いわゆるストレートプレイとは異なる、演劇的文法に疑問をなげかける演劇と言えばわかるでしょうか。
若者の口語・日常的な動作を反復するスタイルが特徴なのですが、とりあえず観ればわかる!言葉を費やす努力を惜しんで動画貼る!


えー、ここでかかっていた音楽は今回変更されて、たしかこの第二部の『クーラー』(クーラーが23度とかいってまじありえないんですけどっていうだけの部)ではステレオラブとトータスの曲がまるまるニ曲。
かけきりということは、この、だらだらした(とよく形容される)喋りと即興的な動きは、実は現実的な曲の尺に合わせて計算され、徹底的に稽古されたものだということで、その二律背反性にまずグッとくるわけです。
もちろんセリフを間違えるのはご法度だし、あのグネグネしただらしのない動きを正確に行う必要があるわけですが、現実の時間のなかで身体性が発揮されているさまをつぶさに見ることができる、という意味で身体のなまめかしさみたいなものがビシビシ伝わってくる。

第一部『ホットペッパー』におけるその二律背反性が一番すごかったんだけど、なんと、ジョン・ケージで「送別会の幹事を任された派遣社員三人が送別会のお店を決める」というのをやりきった。
曲の盛り上がりのところで、「ぼくたまたまなんですけどっていうか今日ホットペッパーを持っていてっていうか」とか言ってホットペッパーを天に高く掲げるくだりで爆笑。

ロストジェネレーションの悲哀とか現代人の幸福論とか、そういうテーマがよく言われるんですけど、私としてはそのへんあまりピンとこなくて、というかその側面・その価値観には疑問を感じるとは言わないまでも、愛することはできなくて、むしろ、”笑い”フォーマットの中でいま一番優れているのがチェルフィッチュなんじゃないかと思いました。
もちろん、現代人の就業形態にまつわる悲しみというか孤独についてはとてもよくわかるんですが、その出来のいいペーソスがあるからこそユーモアがユーモアたりえる。

RAWな感じをつかんでいる先鋭さは、すごい遅れというか、いま!まさにいま!という私たちの笑いをつかみとる感覚とはおおいに齟齬のある”お笑い(漫才・フリートーク)”と比べると破格。というか、ほんとにお笑いで笑えなくなって久しいです。

更にストレートプレイって、物語重視の小説と同じで、あらすじをプレゼンされてるだけな無意味さと時間の無駄さ(時間芸術じゃないっていうか・・・)というのが私の中にあってですね。
そのふたつの消失点にコントがきらめき、ラーメンズがいるという感じだったのですが、ラーメンズ、っていうか小林賢太郎氏、どういうわけか演劇の方に転んでしまった。
コントは演劇の進化系・洗練された形という認識ががらがらと音をたてて崩れ去った。
そういう意味で、私はチェルフィッチュを笑いのフォーマットとして観ている。

それと、「演劇というよりもダンス」とほうぼうで読んだんだけど、私はダンスよりも、能とか歌舞伎だと思った。
複数の色のライティングで、壁に”影”(そのひとの実体的な演出)を映し出していて、川島雄三の映画『しとやかな獣』を思い出した。そこでは能を思わせる音と共に、夕日を浴びながら踊る姉弟のいる団地の一室が示されていた。
様式化された動きという意味においても、宗教性・祭式性のない宴という意味においても、ダンスというよりも、能やら歌舞伎に隣接している気がした。

そしてダンスと言えば第三部の『お別れの挨拶』(解雇されたエリカさんたる人物が、お別れの挨拶を述べると見せかけてセミの腹を踏む感触について語ったり、いま履いているパンプスがいかに自分にとって二羽のペンギンのような風情かについて語る)では、ジョン・コルトレーンが使われていたのだけど、前にローザスの『デッシュ』(同じくコルトレーンだった)を観ていまさらなんでローザスがコルトレーンなんだろうと思わされたのとは対照的でした。

ベルリンのHAU劇場で初演した作品の凱旋公演とのことですが、ホットペッパーの持つ文脈を共有していないドイツ人が受け取ったものと、我々が受け取ったものとは違うことは確か。
お店情報が載っていて、クーポンがついているフリーペーパーという以上のイメージ。いわゆるコレ。



メモ
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by chimakibora | 2010-05-17 02:56 | 観る・聴く