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華ひらく

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有休とって朝から歯医者に行く。治療後、同じビルに入ってるラ・ベットラの姉妹店でランチするのが愉しみ。愉しみというか慰め。
フォカッチャのおいしさに目覚める。危険な目覚め。

それからずるずる猪熊弦一郎展『いのくまさん』@オペラシティに行ったら金曜の午後、展示室には私しかいませんでした。

谷川俊太郎による猪熊氏の仕事を紹介する絵本の出版記念の展覧会ということらしいのだけど、私が谷川俊太郎がきらいなのもあるのかしらん、タイトルのあのフォントで、天井から垂れ下がったビニールにでかでかとコピー(というか絵本の本文)が載っている、その厚顔無恥感にくらくらした。
あのフォントのデザイン性そのものが、絵より暑苦しいという、絵を殺してるという、そんな状況なうえに言葉で現実を異化してるつもりでぜんぜん社会通念そのものじゃん、っていう私の持つ谷川俊太郎観があますところなく発揮されていた気がする。

そしてここからは私が厚顔無恥に、しつれいせんばんを承知で率直に言うと、よくこんなつまんない絵描いてる先からいやにならなかったな~とか思ってしまいました。私はまったくしつれいなことに、ジャン・コクトーにも同じことを思ってしまいます。描いてる手先のグルーヴ感っていうのですか、それがまったく感じられないというか、演出されたプリミティブ感が先立つというか・・・。

ということで、私のなかの「猪熊さん、好き!」という気持ちは、三越の包装紙(その名も”華ひらく”)と猪熊コレクション(がらくたたち)に支えられているのだとわかった。でもその好きさはかなりのものだと思う。ちなみに、あのmitsukoshiの字(やなせたかしによる)の絶妙さをも私は愛する。
山口晃の『今様遊楽圖』(だったけ?)は、三越のつつみがつつましく描かれているのを発見する喜びのための絵だとすら思っている。

三越の包装紙はデパートの楽しさ・嬉しさと直結してるというのもあるし、おくりもののはなやかさが絶妙にデザインされていると思う。
銚子で拾った石がモチーフとのことだけれど、あの、名付け難いコレクションの品物からインスピレーションを受けているというのは、やっぱり猪熊さんが描くひとじゃなくて、集めるひとだからなんだという気がした。
若かりし頃、香川は丸亀の猪熊弦一郎美術館にてそのコレクションを見たとき、ああ、別に名前がつけられないものを集めてもいいんだ!と思って、たいそう慰められた、その気持ちを思い出した。

そして新たに、『宇宙都市休日』など俯瞰都市的な作品が「好き」に加わった。
好きでしばしば見てしまう東京湾の一部に似ている。
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それと、とてもいいものを見たよ。絵じゃなくて、ご婦人ふたり。
閑散とした館内の廊下の死角にちんまり座って、絵についてほがらかに喋り合っていた。
ミュージアムショップで耳を澄ますと、「すっごくいいものみたわ~連れてきてくれて、ありがとう」とかって喋っていました。レジのお姉さんに、「三越の包装紙がこのひとだって、今日知ったのよ!」と嬉々として伝えると、レジのお姉さんは、「私もです!」と答えました。喜び合う三人。
誘ってくれる友人の大切さよ。
by chimakibora | 2010-05-16 04:03 | 観る・聴く