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EIGAWA

最近観た映画をまとめて。




◆『異魚島』
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6月にアテネフランセの行列に並んで『下女』を観て以来、他のも観たい!と望んでいたところ出たキム・ギヨン コレクションDVDボックスを手に入れた。リージョンフリーの日本語字幕付きです。4作品入って5000円台という破格のお値段・・・。

最初に『異魚島』を観て、これは続けて全部観たら熱が出るなと察しました。
なんと言ったらよいのだろう、この雰囲気、他に見たことがないです。綿密な構成と大胆な飛躍も他に類をみない。キム・ギヨンと言えばカルト映画作家とされているけれど、私には、カルトという名の奇形ではなく、正統な手続きとテクニックの映画だと思えました。その上で、全編ものすごい偏った執念によって成り立っています。

済州島に「異魚島」という名のホテルを建てた観光会社の社員ソヌ・ヒョンは、竣工と共にクルーズを企画する。船上で、行き先は幻の異魚島だということ(ちょっとしたジョーク)を発表すると、クルーズの取材に来ていた新聞記者チョン・ナムソクがそれを知って狂ったように怒り出し・・・やがて、船から忽然と姿を消してしまう。異魚島とは、遭難した漁師達がたどり着くという伝説の島で、この島を見た者は必ずそこへと誘われてしまうという伝説がある。
責任を感じて、というよりナムソクの常軌を逸した怒りにとりつかれてしまったソヌ・ヒョンは、ナムソクの上司と共に新聞記者の生まれた島へ行く。その島は女だけの海女の島だった。

ソヌ・ヒョンの島でのナムソクに関する取材と、如何にしてナムソクがあの船に乗ったかに至るまでの回想シーンが交互に映し出され、私たちは、ナムソクが島に縛り付けておいてきた恋人のミンジャはどの女なのか?ということが途中から気がかりで仕方なくなります。けれど、ただの種明かしには終わらず、映画はソヌ・ヒョンが数年ぶりに島を訪れた冒頭へと時間を戻し、妄念の結実とも言えるようなラストを飾るのでした・・・。
キム・ギヨンの男と女、そしてセックスへの考え方はすさまじく、彼の映画はこれほんとに牡蠣の養殖のような世界です。
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◆『絶対の愛』
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もうキム・ギドクなんて観ない。
と観るたび思わされるのだけど、ハ・ジョンウ(『チェイサー』の猟奇殺人鬼っぷりに惚れた)見たさに借りてきた。『世にも奇妙な物語』みたいな映画でした。
キム・ギドクには知性を感じないんだもの。やっぱりアカデミックな修練ってそれが重視されるだけのことはあるなと思わされてしまいます。それに反骨しているというのがキム・ギドクの素性なわけですけど、アンチアカデミズムは、アカデミズム礼賛の別の形にすぎないと思うんだけど・・・。
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一人暮らしの男子のキッチンにこのカフェカーテン。A型かな。電子レンジの上のピンクの布も泣かせる。
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今日カフェにいたあの女を想像してしてよ。って言われてそうします。その後です。そのプロットになんやねん!な易さを感じつつハ・ジョンウきもかっこいい。
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『映画は映画だ』@早稲田松竹

『チェイサー』との二本立てだったけど今回はこっちのみ、仕事帰りに観に行った。
ひどい映画だなと思ったのだけどその内訳を書いておくことは私にとって必要なことだと思われるので書く。
えっとだいぶ記憶が薄れているのだけど観たてほかほかのときはけっこう新鮮な活きの良い怒りに支配されていた。これを『チェイサー』と二本立てにするのは酷じゃないでしょうか。

クライマックスの干潟でドロドロになりながら喧嘩する場面、映画俳優は白い服、ヤクザは黒い服をいつも身につけていたわけなのだけど、二人とも泥色に染まって、白でも黒でもない者になる・・・二人を分けていると思われていた壁というもの実はなかったのだよ、という。そのやり方には文句はないのだけど、全身泥人形のようになった二人が揉み合っているという画面が単純にぜんぜん映画的じゃなかった。こんなに弛緩した画を見せていいの?という風に思いました。
だいたい、「映画は映画だ」ってこの映画に鑑みると、一番映画的だったのがラストのヤクザのガンペの行動だということになって、すなわち「映画は(所詮)映画だ(現実に劣るもの)」ということになりませんか?だとしたらこの映画はいったいどのようなものですか?
不用意な台詞が多いし、メタ映画としての構造があまり機能してない感じもいやだいやだ、とだだっ子のように地団駄のステップで家に帰った。

これは日本のプロモーションのいやなところだけど、チャン・フン監督の名前が公式サイトのトップページのどこにも載っていないのが偏っていていやです。映画が監督のものだとは思わないけれどふつうは載せるでしょう。原案・制作キム・ギドクと大きく書かれているのはキム・ギドクに求心力があるということだとは思うのだけど、それについてもいまいちわからない・・・。近所のTSUTAYAでも韓国映画はキム・ギドクコーナーにだけポップというか一言書いてあって曰く、「天才」とのことです。

”兄貴”って韓国語では”ヒョンニム”と言ってました。兄貴と慕うひとのいる男子に有益な情報。あなたのそのひとはヒョンニムです。

ところで映画俳優スタの恋人役のチャン・ヒジン、どこかで観たことがある・・・と思ってその足で目の前のTSUTAYAに行って、最近観た映画のパッケージを確認したのだけど、『絶対の愛』でもないし、『悪い男』でもないし・・・。帰宅後すぐ、いらいらしてセブンイレブンで買ったロールケーキをいっきに1パック食べて、お腹いっぱいになってから検索したら、正体がわかりました!

『テヒ・ヘギョ・ジヒョニ』EP. 126
テミン(演じるジュンス)のカテキョの先生です。すっ・きり。この回では最後、町のひとたちみんなで少女時代の『GENIE』を踊るのが愉快。

◆『優雅な世界』

こちらもヤクザの映画。はやく来い来い、と思っていたらDVDスルーである日TSUTAYAの棚に並んでいた。
ソン・ガンホと音楽(菅野よう子)めあて。ソン・ガンホがヒョンニムです。ジャンル:ノワールというよりただのブラックという気がしたなー。(精神的・肉体的)愛の応酬というものを欠いているので。ソン・ガンホと音楽は当然のように良かった。
by chimakibora | 2009-10-04 00:42 | 観る・聴く