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URBAN DOCK

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夏が終わる前に、『サマーウォーズ』を観なければ!と焦って、Gと豊洲で待ち合わせ・レディースデイ。
ユナイテッドシネマ豊洲(『東のエデン』に出てくるね)はロビーからの景色が広くわびしく湾岸感覚をもちあわせているひとなら好きなはずで、対照的にシネコンの即物的な喜び(具体的にはポテトとピザとサーティーワンアイスクリーム)が充実していたりと、好きな映画館のひとつです。




封切りからだいぶ時間が経ってしまったのでいろんな評判を目にしたり耳にしたりしていたのだけど、信憑性のある筋からのを総合すると、「意外にふつう」ということで、たぶん、みんながそう言うんならそうなんだなと思いつつ、夏の行事としてワクワクしながら観ました。

◆信頼できる筋の感想をまとめるとこんな風。

・人物造型がおざなり。類型的。
・ヴァーチャルリアリティの可視化が不適切。
・台詞で人間関係を説明するのが下手。
・画面の運動がすばらしい(ひとの出し入れが上手)。
・OZってネーミングダサい。


◆それをふまえての私の感想はこんな風。

・人物造型が、がっかりするほど紋切り型だった。これほどまでの紋切り型ってちょっとなかなかないくらい。
おばあちゃんが一家の精神的支柱っていうフックはいいとして、その構造が近代的な家父長制度の精神性とまったくおんなじものでひきました。なんなんだろ。
政府や行政の偉い人たちと知り合いだから世界を動かせて凄いっていう作品内世界の倫理観のあり方にもひきました。えっと。あと、励ましが力とか。励ましっていうのはふつう言葉に宿っているわけで、経験に基づく言葉をたくさん持つ者によって励まされるということはあるだろうけど(ふつう年長者の方が経験を積んでいると思われるため)、「諦めたら終わり」ってそんなことなら中二でも言えるしその貧困な言葉による励ましの強度ってどうなのよ、だいいちやっぱり根性主義的でマッチョなにおいがします。そういうことを言わないために(他人と繋がるための言葉を生きながら獲得するために)長生きするんじゃないでしょうか。
それに叔父さんですが、幼少時のトラウマが、彼にあのような行動をとらせているという描き方が安易すぎて、なんていうか養子のみんなに失礼だと思いました。

・アンチヒーローの物語(匿名性・無名性の尊重)に見せかけて、世界の問題を個人にひきつけただけ(いわゆるセカイ系?)という、『20世紀少年』の如き愚に陥ってるような気もしましたし。

・ある知人が書いていたように、「こういうのは実写でやってくれ」とは思わなかった。こういうの、というのは、つまり、人情劇のことだと思うのですが、実写の素晴らしい人情劇をたくさん観ていたらそう思うのも無理はないと思うのだけど、アニメーションの質感で現実を描くことの実践の豊かさは、実写のそれとは別に存在すると思うし、それをわざわざアニメでやろうっていうひとがいるとき、私はその挑戦を買います、アニメの可能性をおもしろがる者として。
早朝の縁側に行灯仕立てにした朝顔が並んでいるシークエンスがあったんですけど、それは現実に似て美しくって、でも現実とは違う質感をたたえてそこにあって、つまりはアニメの中の他のものと同じで手が届かないんだけど、でも私が知っている夏っていうものがそこに、アニメらしい省略と表現であって、何でアニメを観るのかってことを確認した気がしたし、たぶん全編を通じてそういうことがしたかったんだろうな、と思ったんでした。

・高校野球なんていう巨大な物語を裏に持ってくるっていう根性にひとつがつんと言ってやりたい。ずるいし、自分の物語で勝負しようとする人のやることか!と思います。

・ヴァーチャルリアリティの表現が不適切かどうかは私の乏しい経験ではわからなかったけれど、OZの世界での主人公の友達のアイコンが二次元だったのには、われわれがいまになってファミコンとかチップチューンを愛してしまう感じがでててキャッチーな味付けだと思ったし、だいいち、白地にいろんな色がぱあーってちりばめられているのは単純にトテモきれいだった(村上隆風だったのはご愛敬)。私はあの色遣い好き。きれいという選択は表現の選択として理に適っていると思う。

・コレが一番の魅力だと思うのだけど、ひとの仕草と動作のセンスが良いです。このあたりはキャラデザインの良さと表裏一体になっている気もするけど(というか私の好みなだけ・・・)、デフォルメしつつナチュラルな動作はモーションキャプチャーを超えた!!!
あれだけの登場人物の関係性を台詞で説明しながら進行する序盤は私は見事だと思ったし、人だしすぎ!(一人一人の存在感が薄い)というありがちな失敗はなかったように思います(別に個々につっこんでるわけでもないのに)。

・デジタルとアナログの対比っていう変な主題はいっそ捨てた方がいい(A.I.とのキモの勝負が花札)。

・いちばん好きなのは風呂の中からふたりの子どもがざぶっと出て来て「同時だ!同時!」って叫ぶとこ。

・”OZ”というネーミングはよいとして、OZの守り神”ジョンとヨーコ”に笑いました。”アラーキーとヨーコ”だったら支持したのに。。。

と言いつつ泣いたのだけど。
私は『タイタニック』も泣きながら観ますけど、というのは、いかに画面が駄目でもロマン(物語)の定石的な部分は受け止めるっていう身体の反射だと思うのだけど、でもそれと批評とは別ですね。ね。

さて、ロビーから外を見ると、なにやらちいちゃい橋が跳ね上がっている!往年の勝ちどき橋みたいにだよ!
Gを急がせて、外へ飛び出すと、既に元通り閉まっていてがっくり膝を落としました。名残惜しんで風に吹かれていたそこへ、「橋あげるぞー」っていう声が聞こえてきたのでワクワクして待っていたけれどいっこうに上がらず。Gに肩をつんつんされ、「あの橋じゃない?」って見たらいままさに帰ってきた船と岸とを繋ぐステップみたいなやつがぐわわーんとあがっているのでした。おとなしくフードコートFood Circusでパッタイを食べて、Breathでスムージー飲んで帰りました。パッタイを、その週四食食べたのでした。
by chimakibora | 2009-09-29 23:08 | 観る・聴く